「おかあさん、みてみてー!」

ぼくはそうげんいっぱいにさくおはなばたけのなかにとびこんで、うしろにいるおかあさんをよんだんだ

ニコニコしながらぼくをみてくれてる、だいすきなおかあさん!なんだか、すごくうれしそうしそうなかおをしているんだ

「ちょっとまってよクラウス〜」

いきをハァハァさせながら、リュカがはしりよってきた

リュカはぼくのふたごのおとうとで、でもせかいいちなかのいいともだちなんだ!

「あ、チョウチョだ!」

「え?どこどこ?……あ、ほんとだ!」

めのまえにヒラヒラとんでいたチョウチョを、ぼくたちはきそっておいかけはじめる

「あまり遠くに行っちゃ駄目よ〜!」

おかあさんのこえがきこえてくる。でも、ぼくたちのめはもうチョウチョでいっぱい!

おいかけて、おいかけて。そのあとはかわにはいってみずあびをしたり、むしとりをしたり、ドラゴといっしょにあそんだりしたんだ。もちろんリュカといっしょにね!

ひがくれるとおじいちゃんのいえにかえって、おかあさんのつくってくれたおいしいふわふわオムレツを食べるの

おかあさんのつくるふわふわオムレツは、あまくて、あったかくて、おいしくて。ぼくたちのだいこうぶつなんだ!

ぼくたちがたべるのを、おかあさんとおじいちゃんはうれしそうにみてるんだ。たべたいのかな?

そうそう、おとうさんもこのふわふわオムレツがだいすきなんだよ!もじゃもじゃのひげでちょっとこわそうにみえるおとうさんなんだけど、ほんとうはすごくくいしんぼう!

いつもおかあさんのふわふわオムレツをおかわりするんだ。おとうさんもおじいちゃんちにくればよかったのになぁ、そしたらふわふわオムレツが食べれたのに

でもいいんだ。あしたは3にんでうちにかえるひだからね!おじいちゃんとはなれるのもちょっとさびしいけど、またそのうちくるっておかあさんもいってるし。おとうさんといっしょにね!







「それではお父さん、お世話になりました」

「いいんだよ。ヒナワちゃん、今度来るときはフリントの奴も連れて帰ってきておくれな。全く、ここ数年顔を見ておらんからなぁ」

「そうですね、今度来るときは家族皆で来たいと思っています……クラウス!リュカ!そろそろ帰るわよ〜」

「「は〜い!」」

「それじゃあね、ヒナワちゃん」

「はい、お父さんもお元気で!」

そういって、ぼくたちはいっしょにかえりはじめたんだ

おじいちゃんちからずっとあるきはじめて、つかれてくたくたになっちゃった

おがわのちかくでちょっとおひるごはんをたべて、リュカとみずかけをしあって……そしたらきゅうにてんきがわるくなってきたの

「あら、雲が出てきたわね……一雨こなければいいんだけど。二人とも、ちょっとだけ急ぐわよ」

そういってすこしかけあしになるおかあさん。ぼくたちはおくれないようについていったんだけど……だけど……

「グルルルルルルル」





なんか、そんなへんなこえがきこえてきたんだ





もうすこしでいわやまをぬけそうなところまできたとき、そんなこえがきこえてきて

「あれ?ドラゴのこえかな?」

リュカがうしろをふりかえったんだ。ぼくもすぐにふりかえろうとしたんだけど、そしたらリュカがしがみついてきたの

「クラウス……なんかあのドラゴ、へんだよ……」

クラウスのいうとおり、そのドラゴはすこしへんだったんだ

ふつうのドラゴはやさしいめをしてるんだけど、そのドラゴはものすごくこわいめをしていた

それに、なんだかからだのいちぶがすごくかたそうだった。フライパンにつかってそうな色をしてたんだ

「ひぃっ!」

なんだかすごくこわくなって、リュカにだきついたの。リュカもおなじようにぼくにしがみついてきた

にげようとおもっても、からだがうまくうごかないし。こわくてこえもでなかった

そしてそのドラゴは、ものすごいはやさでこっちにむかってはしってきたんだ

「「うぅ……あぁ……うぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」」

もうたべられちゃうのかなって。なんかそんなことかんがえてたら、ふたりですぐになきだしちゃった

「危ないっ!」



















だからね




















なにがあったのか、ぜんぜんわからなかったんだ




















ただ、ふたりいっしょにかわにつきおとされたのと


















































おかあさんがドラゴにかみつかれてるのだけは、おぼえていたんだ


















































だから、そのあとかわにおぼれて、きがついたらまっくらで、むらのみんなにたすけられて

たきびにあたってるときも、なにがおこったのかわからなかったんだ

ただ、ものすごくかなしくなって

おかあさんにはもうあえないのかな?ってかんがえちゃって、すぐにないちゃった

おとうさんも、めがまっかで、なみだがいっぱいながれてた。ぼくもリュカも、おなじだった

そして、そのひはそのまますぐねむくなっちゃったんだ




















そしたらね、ゆめのなかでおかあさんがでてきたんだ

ひまわりいっぱいのおはなばたけのなかに、おかあさんがいて。こっちにむかってニコニコしてくるの

おかあさんっていっぱいよんで、おもいっきりはしっていってだきしめてもらおうとしたのに

おかあさん、ちっともちかくならない。それに、そのうちすごくかなしそうなかおになったの

ごめんね……って、いってるようなかおだった




















めがさめて、おとうさんはいなくて。むらのひとにリュカとつれてかれて



そこにつくと、みんながないてて



おはかが、あって



ヒナワってなまえが、ほってあって



……すごく、かなしくなったんだ



おかあさん

おかあさんおかあさん

おかあさんおかあさんおかあさん

おかあさんおかあさんおかあさんおかあさん

いっしょにほんをよんでくれたおかあさん。……もう、よんでくれない

おいしいふわふわオムレツをつくってくれたおかあさん。……もう、たべられない

こもりうたをうたってくれたおかあさん。……もう、うたってくれない

いっしょにあそんでくれたおかあさん。……もう、あそんでくれない

もっと、ぼくがつよかったら……おかあさんはしななくてすんだのかもしれない

あのとき、せめてにげてたら、おかあさんはしななくてすんだのかもしれない

となりで、リュカがないてる

ぼくもすごく、なきたくなった

でも、ぼくはないちゃだめなんだとおもう。だって、リュカのおにいさんなんだから

ぼくがないたら、おとうさんはもっとこまるとおもうから




















「……ねぇ、おとうさん。ぼくだよ。クラウスだよ」

ろうやのなかでうつむいていたおとうさんがこっちをみる。めがすごくあかかった

「リュカもくるようにいったけど……あいつは、あれからずっとおかあさんのおはかのまえでないてる」

むねがくるしい

いつもあまりしゃべらないけど、いつもつよくてだいすきなおとうさん

ないたとこなんて、みたことなかった

「おかあさんをみごろしにしたのはぼくがよわかったせいだ……!ぼくがもっとつよかったら、おかあさんはしなないですんだんだ!」

ぼくがつよかったら、おかあさんはたすけられた

おとうさんも、リュカも、みんななかないですんだんだ!

「……おとうさん、このリンゴ、おいていくよ。しんがかたくて、たべづらいかもしれないけど……ぜったい、たべてね!」

これで、おとうさんはだいじょうぶ。きっとすぐに、でてこられるとおもうから

「おとうさん……ぼく、もっとつよくなるよ。……ドラゴだって、かんたんにたおせるくらいつよくなってやる!」

「クラウス……」

でも、たぶんそうなると

「おとうさん……いままで」

おとうさんにも、リュカにも

「いままで……ありが……と……」

あえなくなっちゃうようなきが、する

「クラウス、お前、何をする気だ?」

だから、ありがとうっておとうさんにいって

それに、ぼく。おとうさんとおかあさんのこどもで……リュカのおにいちゃんで

「クラウス……?おい、クラウス!どうした!?」

「……じゃあ、ね」

ほんとうに、よかった




















もう、なにもかんがえられない。ただ、はしるだけ

どこにむかっているのかなんて、しらない。ただ、はしるだけ

でも、ひとつだけわかった

さっきの、おかまのひとにもらったこのちからをつかえば、きっと、ドラゴがたおせる

「……おかあさんの、かたきっ!」

めのまえにあのドラゴがあらわれて、ぼくはすぐにちからをつかおうとしたんだ

「PK……っ!」

でも、いきなりからだがふっとばされた

とりのようにおおぞらをまって、つぎにからだがすごくいたくなった

ドラゴのからだがうえへうえへと、どんどんとおざかってく

「っ!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

それでも、もういっかい、ドラゴにねらいをさだめた

こんどは、はずさない

「PK……」








































「グシャッ」








































そこでぼくのいしきは、とぎれた















































































「おい、どうだ。動きそうか?」

「ハッ!なんとか大丈夫そうであります!」

「そうか、しっかりとやれよ。なんてったって、こいつがいればドラゴンは僕の物になるんだからかな」

「ハッ!了解であります!」

「どれどれ……ヨクバ、本当にこのガキがドラゴンを復活させるための鍵なんだろうな?」

「ご安心くださいポーキー様。このヨクバめにお任せを」

「安心できないからこうして聞いているんじゃないか。大体崖から落ちて即死してたのに、コイツを使ってどうやって封印をとくんだ?」

「ご安心ください。ドラゴンの復活はこやつの特別な力が必要なのです。特にもそれは脳の中にあるもの。
 幸い脳の全部が駄目になったわけではないので、修復は容易です。後は機械の体にして洗脳をかけて、目覚めるのを待てば世界はポーキー様のものになります」

「ふぅん……まぁいいや、僕には時間はたっぷりとあるしな!……嬉しいよ。これで本当に僕が世界の王になれるんだ
 思えばギーグも役立たずだったし、ネスも僕の邪魔ばっかしやがって!世界が滅びたと思ったら、この島だけ残ってるしさ!
 折角僕だけの世界になると思ったのに……ネスの奴、本当に余計なことをしてくれたよ!
 ……まぁ、アイツの子孫がここにいるって事は不幸中の幸いだったけどさ。ま、これもポーキー様の波乱万丈な人生だから仕方ないけど
 それじゃ、後しっかり頼むよ?」

「はは、お任せを」










どこだろ、ここ

まっしろ。ほんとうにまっしろ。せかいがまっしろ

どこをみわたしてもまっしろ。まっしろいがいのなにもみえない

それに、からだがさむい。すごくさむい

なんでこんなにさむいんだろう。こんなときは……がいちばんいいのに

……あれ?ぼく、いまなにをかんがえようとしたんだっけ?

なんでだろう。おもいだせない

こころにぽっかりとあながあいたみたい

なんだか……つかれてきちゃった……

あぁ……なんだろこれ。ちいさいおとこのこがみえる

ひげがもじゃもじゃのおとこのひとに、さわるときもちよさそうないぬも

それに……なんだかやさしそうなおんなのひともみえる

なんだろ、これ

みててすごくなつかしいのに、どれも、みたことがない

どうしてだろ……

なんでだろ……










凄く、胸がドキドキしてる

多分、これが最後の戦いになるんだと思う

もう邪魔は入らない。ポーキーも動くことはできないだろうし、後は僕が針を抜けば終わりだ

でも、きっと。君は最後にまた、僕の前に立ちはだかるんだと思う

君の素顔はまだ見ていない。でも、仮面をとったその素顔は、きっと僕が思い描いている顔だと思う

3年前に別れてそれっきりだったけど、それまでは毎日一緒にいたんだ。例え顔が見えなくても、一瞬で誰か分かった

この戦いが終わったら、君と一緒に、怪我をしたお父さんを連れて家に帰りたい

今はもうお母さんはいないし、村も凄く変わってしまったけれど、また君と一緒に生きていきたい

ずっと僕は……君に会いたかったんだから……










「リュカ、準備はいいか?」

「……うん。もう大丈夫」

「アイツはきっとこの奥にいる。……いいか?絶対に連れて帰るんだぞ?」

「大丈夫。きっと全てがうまくいくさ。多分そう……だと思うよ、うん」

「わんっ!わんっ!」

「皆……皆、ありがとう。絶対、絶対連れて帰るから……!」










テキ

メノマエニイル

テキ

コウゲキ

コウゲキ

「PK……Ω」

「……ッ!」

テキ、コウゲキ、キイテナイ

コウゲキ、モウイチド

「PK……Ω」

「……スッ!」

テキ、マダコウゲキ、キイテナイ

モウイチド、モウイチド

「……ウスッ!」

キカナイ。フシギ。タオレナイ

コウゲキ、モット、コウゲキ

「……ラウスッ!」

オカシイ。フシギ。オカシイ、オカシイ

「クラウスッ!」

タオス、テキ、タオス。テキ、タオス

「駄目だリュカ……聞こえてない」

「クラウス!僕だよクラウス!リュカだよ!」

タオス。テキ。タオス。テキ

「もっと、もっとだリュカ。もっと名前を叫んでやれ……」

「クラウス!クラウスッ!もうやめようクラウス、こんなことしたって何にもならないじゃないか!」

ウルサイ

「クラウス!クラウス!」

ウルサイ、ウルサイ

「クラウスッ!」

ウルサイ、ウルサイ、ウルサイ

「クラウス……僕だよ、リュカだよ……」

リュカ?リュカ?リュカ?リュカ?

「帰ろうクラウス。僕もう強くなったんだからさ。泣き虫じゃなくなったからさ。一緒に帰って、また、皆で一緒に遊ぼう?ね?」

……リュカ?

『クラウス……お願い……もう……止めて』

イナイ、ダレモ。ゲンチョウ、ゲンチョウ

『お願い、どうか思い出して!クラウス!』

ダレモイナイ、ゲンチョウ。ダレモイナイ、ゲンチョウ。ダレモイナイ、ゲンチョウ。

デモイタイ。アタマ、イタイ。イタイ、アタマ

「ああぁ……アァァアァァァァァァァァァァアッ!」

イタイ、イタイ、イタイ、アタマ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ





















『クラウス……もう、お母さんのところにおいで。疲れたでしょう?おいで……クラウス』




















久しぶりに、頭がすっきりした気がする

今までは、ずっと頭の中がぼやけてた

いつからだろう、こんな風になってたの

いつから、こんな仮面を被っていたんだろう

もう、いらない。こんな仮面なんか。僕にはもう、必要ないもの

そして、目の前にいる男の子

凄く、懐かしくて

凄く、会いたくて

凄く、嬉しかった

でも、僕はもう駄目

体の自由が効かないもん

あーあ

折角、折角会えたのにな

折角……お父さんや、リュカに会えたのにな

体が勝手に動く

今まで打ったことのないくらいのイカヅチを放つ

でもそのイカヅチは跳ね返って、僕に飛んできた

もちろん避けられるはずもない。避ける気もない

最後に感じたのは、ただ、痛かった




















やっぱり、やっぱりクラウスだった。仮面の下の顔は、やっぱりクラウスだった!

凄く、嬉しかった。凄く、嬉しかったんだ

……だけど、イカヅチが跳ね返って、クラウスに当たった

凄いイカヅチだった。もう駄目だと思った

でも、クラウスが僕に近づいてきて

僕のことを、抱きしめた

懐かしい……におい

おかあさんの作ったふわふわオムレツを一緒に食べて

いつも一緒に遊んで、お風呂に入って、一緒に寝ていたときに感じていた……懐かしいにおい

涙が、溢れそうになった

「なぁ、リュカ……」

ボロボロになったクラウス。抱きしめた体は、凄く冷たい

「こんなことになって、ごめんな。僕の最後のときに一緒にいてくれて、本当に嬉しいよ」

ボロボロになった手を触った。凄く、冷たい。人間の手じゃ、なかった

「ありがとう、お父さん。ごめんなさい。ちゃんと、言う事きかなくて」

でも、ここにいるのは。確かに、クラウスで

「もう、僕はお母さんのところにいくよ。リュカ」

僕の、たった一人の

「また、さ。会えるといいな。」

お兄さん、だった

「さよなら。」

お兄さん……だったんだ





















ありがとう





















ごめんな





















また、会えるよな





















……ばいばい





















リュカ

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