地図にものらぬ、南国の孤島「コホリント」
この島にて、ある物語が幕を継げようとしていた・・・








ゼルダの伝説 〜夢をみる島〜
海岸を走っている少女がいた 彼女の名はマリン。メーベの村に、父のタリンと一緒に住む、村のアイドル的存在だ 彼女の歌声は天使のような響きをもち、メーベの村と姉妹都市であるどうぶつ村でも彼女の人気ははかりしれない そんな彼女が向かっている先は・・・少し前、彼女が同世代の少年と夢について語り合ったところだった 息を切らせながら目的の場所へとたどりつく。彼女の目の先には、緑色の帽子と服を着た少年がいた 少年はマリンに気づくと、彼女へと手招きをし、言った 「マリン、こっちこっち」 彼の名はリンク。ある日突然この村へやってきた、不思議な少年である 今まで一度たりとも、この村に外部の人間がやってきたことはなかった。いや、それ以前にこの島以外に人がいるなんて思っていなかった人も多かった リンクはハイラルという国からやってきたのだと言った 一度は悪に支配されかけたハイラル国を、彼は救った そして、さらに強くなろうと、他の国へ武者修行へ行ったのだそうだ その後、無事修行を終え、ハイラルへの帰途についていた時に大嵐にあい、この島に流れついたのであった その時、海岸で倒れているリンクを発見したのがマリンだった 彼は様々な事を教えてくれた。外の世界の事、自分がしてきた冒険の事など・・・それらは外の世界に憧れるマリンにとって、とても新鮮なことであった 彼女が今いる浜辺で、リンクと約束をしたことがあった いつか必ず、リンクの故郷であるハイラルへ自分を連れてってくれると・・・リンクは笑って頷いてくれた しかし・・・彼はある時をさかいに変わった それは彼が六回目の冒険から帰ってきたときであった 彼はいつも冒険が終わると、私達の家へ帰ってくる そして、疲れきった顔をしながらも、マリンとタリンに今してきた冒険の話をしてきてくれた 数々の罠、様々なモンスター、そして、奥深くに隠されてあったセイレーンの楽器 村の者達が決して踏み入れる事がない聖域へ彼は足を踏み入れ、そこで素晴らしい冒険をしてきた しかし・・・その日は違った いつものように話を聞こうと期待していたマリンだったが、その日に限って彼は何も喋らなかった そのうえ、時節、二人の顔をみて、哀れむような悲しむような・・・そんな表情をしたのだった 無論、そんなことをしたのはこの日しかなかった 次の日からは、変わらないリンクがいた・・・そう、変わっていないように見えるリンクが・・・ 彼女はそのとき悟ったのだった。彼はなにか重大な秘密を知ってしまったのだと。そして、おそらくそれが風の魚に関係しているのだということを・・・ マリンはゆっくりと、リンクの隣に腰掛けた 既に夜にさしかかっている。水平線の向こうには、太陽が沈み始めていた 横目でリンクの顔をのぞく。彼は遥か海の彼方を見ていた そして、少しの沈黙の後、リンクが喋り始めた・・・ リンク「マリン・・・俺、どうすればいいのか・・・分からなくなったよ」 今にも消えてしまいそうな、かよわき、小さな声 彼の顔が、一瞬光った気がした リンク「俺・・・この島にきて・・・最初はどうなるんだろうと思ってた。不安だった・・・     でも、あのフクロウに言われて、風の魚に会うことが出来れば戻れるって言ったんだ・・・     8つの魔物の住処に眠る、8つの聖なるセイレーンの楽器。これを聖なる卵の前で奏で、風の魚に会えばいいんだって・・・」 それはマリンが初めて聞いた事で会った。特に、魔物の住処がそのような意味を持っていたことなど知るよしもなかった リンク「俺、無我夢中で進み続けたんだ・・・そして、マリンと約束して、一緒にハイラルに帰ろうってことも言った・・・     でも・・・でも・・・」 徐々に涙声に変わっていく彼の言葉を聞きながら、彼女は黙って聞いていた リンク「俺は・・・この島を・・・マリンを・・・消し去ってしまうかもしれないんだ・・・」 マリン「・・・え!?」 それは信じられない話。だが彼女には聞こえた。自分達を消し去ってしまうんだと・・・ それは、リンクが動物村の北にある、ある神殿に言ったときのことであった・・・ リンクはフクロウの助言の元、この遺跡を尋ねていた リンク「なんでこう・・・見た事ある敵がこんなに・・・」 彼がそう呟いたのは、ある石像を見たときであった ちょっとした拍子で人型の石像にリンクは触れた。するとその石像の目に光が宿り、リンクを狙って攻撃し始めた リンク「・・・こいつ、ハイラルの神殿にいた・・・アモス!」 すぐさま剣で斬りつける。しかし、感触はなく、アモスは少し弾き飛ばされただけで、ダメージをくらった様子がなかった リンク「ちっ!なら・・・こいつで」 彼は先ほど村の道具屋で買ったばかりの弓矢を装備し、アモスへと射た 『ストンッ!』 矢はアモスの目に突き刺さり、機能が停止した リンク「ハァッ、ハァッ・・・なんでここにアモスがいるんだ・・・」 不思議に思い、辺りを見回すと、そこには同じ形をした石像がたくさん並んでいた リンク「なんかあるな・・・ここには・・・」 彼はそう呟きながら、目の前にある神殿へと入っていった。そして彼はここで、驚くべきモノを見たのだった サイのような兜をかぶっており、手には剣と盾・・・ まぎれもなくそれは、ハイラルの神殿で見たデグアモスだった リンク「!!なんでこんなとこにコイツが!!」 リンクはそう驚きながらも、弓を引き絞っていた コイツがハイラルにいたのと同じモノなら、矢が効くはずだ・・・と 案の定矢を体に浴びて、苦しそうなうめきをだした イケる!と思った矢先、デグアモスがリンクめがけてジャンプしてきた リンク「グハッ!・・・っつぅ、やっぱ全部一緒ってわけじゃないんだな」 ダメージをくらいながらも、弓を射続けるリンク やがて、盾が破壊され、兜もはじけとんだ。だが、その奥に不気味な二つの光がうごめいていた リンク「ちっ、まだ死なないのか!?」 そう言いながら、矢を二発続けて射た。するとデグアモスは雄叫びをあげ、その場に崩れ落ち、機能を停止した リンク「ハァハァ・・・一体どうなってるんだよ・・・」 不問の表情を浮かべるリンク。そして、その先にある扉が開かれた その部屋は真っ暗闇であった。だが、前方の壁に、何か壁画あるのをうっすらとみつけた 彼は近くにあった燭台に火をともし、その内容を読んだ。そこにはこう記されていた
「コレニ フレシ モノニツグ コホリントハ シマニ アラズ ソラ ウミ ヤマ ヒト マモノ ミナ スベテ ツクリモノナリ カゼノサカナノ ミテイル ユメ ノ セカイ ナリ カゼノサカナ メザメル トキ コホリントハ アワ ト ナル ワレ ナガレツキシ モノニ シンジツ ヲ ツタエル」
リンク「・・・どういうことだ!?」 もう一度その壁画をよく読み直す クジラのような生き物・・・そしてあのフクロウの絵らしき物がかいてある。そしてその下には・・・ リンク「この島が・・・風の魚の見ている夢で・・・皆作り物だって!?」 驚きの文に目を見開く リンク「そんな・・・」 信じられなかった。今まで接してきたもの全て、作り物だって・・・? 神殿の外に出ると、フクロウが待っていた リンク「おい・・・一体どういうことなんだ」 フクロウ「この中にある石版は、古より伝わるもの。この島が「風の魚」の夢の中にあると記しておる」 リンク「だからそれがなんだって聞いてんだよ!!!」 叫び声をあげるリンク リンク「一体何なんだよ!?この島は夢だってか!?今、立ってるこの神殿も、村の人々も、マリンも・・・みんな夢の中の作り物なのかよ!!!」 フクロウ「さよう・・・」 リンクの問いに、フクロウは静かに答える リンク「じゃあ・・・じゃあ俺は、この島を滅ぼすために旅を続けているのか!?マリンを消滅させるために旅をしているのか!!」 マリン。彼を助けてくれ、介抱してくれた少女 リンクはこの少女に好意を抱いていた。それは、ゼルダ姫の時とはまた違う、彼が生まれて始めて抱いた感情だった リンク「答えろよ・・・答えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 リンクはフクロウに向かって剣を振り下ろした。しかし、ただ空を切っただけにすぎなかった フクロウ「静まれぇぃ!!!!」 そのとき、フクロウがとてつもない馬鹿声を発した。ハッとリンクは我に返った フクロウ「夢か現かなど、誰にも確かめることはできんぢゃろう・・・宝の箱は、開けて見なければ中身を知ることが出来んように・・・      夢も起きてみるまでは、夢とわからんものぢゃ・・・本当の事を知るものは「風の魚」だけなのぢゃよ・・・」 リンク「なぁ・・・じゃあ・・・じゃあ俺はどうすればいいんだよ・・・」 搾り出すように出した声・・・彼は泣いていた フクロウ「・・・信じる道を行きなされ。いずれ答えは見えてこよう」 そういってフクロウは飛び去っていった リンク「うっ・・・うっ・・・くそっ・・・くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」 彼の叫びが、むなしくそこにこだました マリン「そう・・・だったんだ」 波の音を聞きながら、マリンは彼の話の全てを聞いた あの日、あのとき、彼が何故いつもと違っていたのか・・・それにはこんな深い理由が隠されていた リンク「あの後は・・・なにも考えずに進み続けた・・・一旦深く考えてしまえば、もう先に進めなくなってしまいそうだったから・・・     8つの楽器全てを手に入れるまではとにかく・・・突き進むって決めたんだ・・・そして」 リンクはうつむいたまま、語った リンク「マリン・・・俺、どうすればいい・・・?俺は・・・俺は・・・マリンを消したくないんだ・・・マリンを失いたくないんだ・・・」 マリン「リンク・・・」 吐き出された気持ち。偽りの無い心の叫び。だが、時は非情を奏でる・・・ しばらくの沈黙が流れる・・・ 先に口を開いたのは、マリンのほうであった マリン「リンク・・・貴方は・・・風の魚を目覚めさせた方がいいと思うわ」 リンク「えっ!?」 驚きの表情でマリンを見るリンク マリン「貴方は今まで、数々の冒険をしてきたんでしょ?これからも、世界の神秘をこの目で見て見たいでしょ     ・・・こんなところで立ち止まってしまったら、貴方はこの先一生後悔するわ」 リンク「マリン・・・」 マリン「そう・・・貴方は・・・こんなとこに・・・いる人じゃ・・・ない・・・から・・・」 リンクはマリン声が震えている事に気づいた。そして、彼女の涙にも・・・ そのとき、突然マリンがリンクに抱きつき、叫んだ マリン「ねぇリンク、どうして!どうして私達が消えなきゃいけないの!!何も悪い事したわけでもないのに!!!ねぇ、なんで!!!!     私達は生きてる!一生懸命生きてる!!なのに、これが全部夢の中のお話だっていうの!?ねぇ・・・答えてよ!!!」 叫ぶマリン・・・彼女の言うことも当たり前の反応だろう 実は今の世界は全部夢の世界で、自分達は夢の世界に出てくるキャラクターだ・・・当の本人にとっては、これほど酷いことは無い リンクはそんなマリンの叫びを黙って聞き、そして強く抱きしめた ・・・どれくらいの時間がたったであろう。既に陽は沈み、月が昇っていた マリン「もういいよ・・・リンク」 今やもう聞きなれた、マリンの声が耳に届く。リンクは彼女を抱きしめたままだということにきづき、慌てて手を離した リンク「あ・・・ゴメン、痛かった?」 マリン「うぅん・・・大丈夫・・・ゴメンね、なんか言ってることが矛盾しちゃってるね」 リンク「別にいいよ。マリンの気持ちも分かるしさ」 再び・・・今度はゆっくりと、リンクの背中に手を回し、胸に顔をうずめた 鼻にかかる髪の毛から、ほのかなシャンプーの匂いがする。リンクはマリンの体を優しく包み込むように抱きしめる やがてマリンは、ゆっくりと言葉を紡ぎだした マリン「不思議だよね・・・この世界は夢で、私達は風の魚に作られたモノ     ・・・でも、触れれば感触はあるし、ほっぺをつねっても痛みは感じる     海の匂いも感じるし、お腹もへれば、眠くもなる・・・なによりも、こうして生きている・・・     でも、風の魚が目覚めてしまえば、消えてなくなってしまう、儚いモノなんだよね・・・」 リンクは何も言わず、ただ彼女を抱きしめたまま、言葉を聞いていた マリン「リンク・・・やっぱり貴方は行って・・・やっぱり貴方は此処にいるべき人じゃないから・・・一緒に行けないのが残念だけどね」 そういって微笑みかけるマリン リンク「マリン・・・」 マリン「でも・・・一つだけ約束して頂戴」 リンク「何だい?」 マリン「私のこと、忘れないでね・・・忘れたら承知しないからね!」 涙を流しながら、リンクに極上の微笑を浮かべる リンクはそんなマリンを再び強く抱きしめる。自分の手から零れ落ちないようにといわんばかりに リンク「忘れないよ・・・絶対・・・俺が生きている限り、ずっと、マリンの事は忘れないから!」 そうしてリンクは、マリンの唇にそっと自分の唇を重ねた・・・ 二人にとっては永遠と感じられる時間だった。たとえそれが、一分と満たなかったとしても・・・ リンクはそっと唇を離す・・・名残を惜しむかのように マリン「リンク・・・もう一つだけ、約束追加ね」 リンク「ん?何」 マリン「ここが夢の世界だとしても、いつかまた必ず・・・会おうね」 リンク「分かった・・・必ず、また会おう」 そういって立ち上がるリンク。時間は既に真夜中に近い マリン「これ・・・持ってて」 マリンは懐から小さな、虹色に輝く貝殻を取り出し、リンクの手に持たせた マリン「綺麗な貝殻でしょ・・・子供の頃見つけた、私の宝物なの。次に会うときまでこれを持ってること・・・約束よ」 リンク「うん・・・わかった」 リンクは貝殻を、そっとポケットの中にいれた。そして・・・ マリン「行ってらっしゃい」 リンク「行ってきます」 二人の声が夜の海に吸い込まれていく やがて、二人の影がもう一度重なった後、リンクは歩き出した 彼の背後で聞きなれた、もう二度と聞く事がないであろう、風の魚の歌が響いていた・・・ リンクは聖なるタマゴの前にいた 袋からオカリナを取り出し、そっと吹き始める 曲はもちろん、風の魚の歌・・・ 吹き終わると同時に、大地が揺れる。そして、タマゴに穴があいた それと同時に、フクロウがやってきた。タマゴの上からリンクを見て、言った フクロウ「風の魚はタマゴの中で待っておる。さあ!殻の中に入るのじゃ!」 リンクはゆっくりとタマゴの中へと入っていく フクロウ「ぼうや・・・いや、リンク殿・・・頑張るのじゃぞ」 タマゴの中は真っ暗な空間だった 外の光さえ届かない、閉じられた空間 ふとリンクは、うっすらと燭台が見える事に気づいた リンク「あそこに火を灯せば・・・」 魔法の粉を手にし、駈けて行く。・・・が、そこで異変に気づいた リンク「あれ・・・」 足元に、感触が無い・・・ 脳が、穴に落ちていくということを判別したときには既に遅く、自由落下を始めていた リンク「うわあああああああああああああ!!!!!」 身が風を切っていく。落ちていく感触を感じながら ―くそっ・・・どこまで続いてるんだ そう思ったのも束の間、辺りがどんどん明るくなっていく それとともに、足に衝撃が走る。どうやら着地したようだった リンク「ふぅ・・・」 ため息をつきながら辺りを見回すそこは、正方形の部屋であった。東西南北に通路が続いている ―もしかして・・・此処でアレを使うのかな そう思い袋から一枚のメモ帳を取り出す そこには、図書館で書き写したタマゴの中の道しるべが写しだされてあった リンク「あの秘密って、こんなことだったんだな・・・」 道順に沿って歩いていくリンク。そして・・・ リンク「ビンゴ!」 彼の足元には暗い空間が広がっている おそらくここを落ちれば風の魚の元へとたどりつけるのだろう ―覚悟は決めた・・・ リンク「さて、行くか」 彼は落下していった・・・ そこは四方を壁で包まれた、密閉された空間だった 足下には風の魚と思われる絵が描いてある 不意に、声が響いてきた
『我らは、悪夢の中より生まれいでしもの・・・夢という閉ざされた世界に秩序を築くがため、「風の魚」に永遠の眠りを与えた・・・ これで、目覚めによって、島が消えてしまうことは無い 我々こそ神なのだ!・・・だが、お前は来た・・・我らの邪魔をしになっ! クックックッ。お前には我らを倒すことが出来ぬ!いくぞ!!』
すると、リンクの足元にあった影が移動し、目のようなものが現れた それは形を変えてゾルのような魔物に変化した リンク「はぁっ!」 剣で斬りつけるリンク。だが、感触が得られないまま、魔物は飛び散っただけであった 再び再生し、攻撃を再開してくる その後も弓やファイアロッドなど、様々な攻撃を与えるが一向にダメージを与えた様子はない ―くっ・・・どうすればいい・・・物理攻撃が効かない・・・何か他の武器を・・・ そう考えていると、突然魔物が足元から現れた リンク「!!うわぁっ!!!」 吹き飛ばされるリンク リンク「くそっ・・・なにかいい手はないのか!?」 何か策はないか考えながらも、次の攻撃に身を固める だが、魔物がなかなか襲ってこない ―・・・なんだ!? そう思っていると、苦しみから介抱されたかのように魔物が襲ってきた リンク「ふっ!」 素早くよけるリンク ―なんだったんだ・・・今の 先ほど魔物がいた場所を横目で見るリンク ふとそこにあるものが目に映った。それは・・・ リンク「魔法の粉!」 それは、床に落ちていた魔法の粉であった 少し粉がばらまかれているのを見ると、おそらくさきほど吹き飛ばされたときにこぼれたのであろう 瞬時に意味を理解したリンクは、魔法の粉を手に取り、魔物にばらまいた 『グギャア!!!』 形状を震わせながら声をあげる。どうやら粉の作用が魔物にダメージを与えているようだ リンク「これなら!!!」 粉を大量に浴びせる。すると、魔物が再び影になり、リンクの正面に立った 再び形を変えていく。その形に、リンクは驚くことになった リンク「・・・アグニム!?」 そいつは、突如ハイラルに現れた、魔術師の名前だった アグニムは七賢者の血を引く娘達を生け贄に捧げ、闇の世界の封印を解こうとしていた リンクは最後の七賢者の子孫の一人、ゼルダ姫を守り、アグニムを倒すために、伝説の聖剣「マスターソード」を手に入れるために冒険に出た しかし、マスターソードを手に入れ、いざゼルダ姫の元へ帰ったときには、既にゼルダ姫はアグニムにさらわれていた 結果的に七人とも生け贄に捧げられ、闇の世界への扉が開かれてしまったが、リンクが闇の世界で確かに倒したはずだった ―なんでこいつがここにいる・・・ 沸き出る疑問。だが、ふとそこで思いついた ―ここは夢の世界だ・・・ということは、俺が今まで見てきた敵が出てきてもおかしくは無い。現に、デグアモスも現れたしな・・・それなら! 見ると、魔物は手を目の前に差し出し、パワーを溜めている。そして、エネルギー弾を発射した リンク「やっぱり!」 リンクは剣を構えると、エネルギー弾を剣で弾き返した 悶える魔物 ―思ったとおりだ。こいつ、アグニムと同じように剣で弾を弾き返せば大丈夫だ 再び剣を構えるリンク 魔物が次の動作に入り、再びエネルギー弾を発射する だが、今度のは形が違う。バブルのような形をしたものが、回りながら迫ってくる そんなことは気にせずに剣をだすリンク。しかし・・・ ―すり抜けた!! 弾は回転しながら、剣などなかったかのようにすり抜ける リンク「くっ!」 ロック鳥の羽根を瞬時にもち、ジャンプする 弾は後ろの壁に当たると、拡散して砕け散った リンク「へぇ・・・なにもかもが同じってわけじゃないんだな」 繰り出されるエネルギー弾。リンクは剣を構える ―今度のははねかえせるやつだ! 再び剣ではじき返し、魔物に命中させる すると、再び影となって、形状を変化させ始めた リンク「く・・・今度はコイツか」 それは、ムカデのような形となっていた ヘラの塔で見たのや、テールの洞穴で見たものと形が一緒である リンク「ってことは、尻尾が弱点のはずだ」 幸い今回は下に落ちる心配も無い。攻撃するたびに動くスピードが変わるのは一緒だった 何度も斬りつけるリンク。やがてその形体にも限界がきたのだろう。再び形を変え始めた リンク「やっぱりコイツか・・・アグニムを見た時にきそうだなって思ったんだよな・・・」 それは、豚の魔物のような形をしている。片手には西遊記に出てくる、猪八戒の熊手に似た武器を装備している ガノンであった 平和だったハイラルの国を闇に陥れようとした張本人 元はガノンドロフという人間の盗賊であった。しかし、トライフォースを求め聖地へと足を踏み入れたがため、豚の魔物になってしまったのだった ―まさか・・・またコイツと戦うことになるとはな・・・ だが、戦い方や弱点は覚えている。圧倒的にコチラが有利だ その思いが少しの慢心を作ってしまったが・・・ 魔物は火で出来たコウモリをリンクへと飛ばした。それをリンクは素早くかわす ―今だ! 一瞬できた隙。リンクはその隙を狙い、剣を振り下ろした ・・・しかし 「ガキィッ!」 という金属音が鳴り響いた。魔物が熊手で剣をガードしたのであった リンク「なにぃっ!?」 それとともに、リンクは魔物に吹き飛ばされた リンク「ぐはっ!」 床に叩きつけられるリンク リンク「ちぇっ・・・やっぱなめてかかっちゃ痛い目みるな・・・」 リンクは立ち上がると、剣に闘気を集中し始めた リンク「はぁぁっ!必殺・回転斬り!!」 回転斬りとはハイラルにいる選ばれし者の一族が使える奥義である 手持ちの剣に自分の闘気をため、遠心力の力をフルに活用し、敵に大ダメージを与える技である 「ザシュッ!」 魔物に斬りつける。斬られたその部分からは緑の血が流れ出していた ―ちっ・・・あんまり効いていない!?防御までもが上がってるのか・・・ 次々と攻撃をしかけるリンク だが彼はこのとき、一つの思い違いをしていたことに気づかなかった 実際に魔物がガノンの姿形をしているからといって、攻撃の仕方やパターンは同じでも、防御力や攻撃力があがるわけではない 彼はまだ気づいていなかった・・・長年愛用していた剣の寿命が既に近づいてきていた事を そして、先ほど魔物に斬りつけたさい、刀身にほんのわずかだが、ヒビが入ったことを・・・ だが、幸いなことに、回転斬りの威力と魔物の防御力では回転斬りの威力の方が上回っていたため、それ以上剣がダメージを受けることはなかった 「ギャオオオオオオオオオ!!!」 悲鳴とともに影に形を変える魔物 魔物は影の状態でリンクへと襲ってきた 影はリンクの足元まで来ると、光を発した。それと同時に、リンクは体から力がなくなっていく感触にみまわれた ―コイツ、体力を奪うのか・・・ リンクはすぐさま影から離れる。そして、剣を突き刺した・・・しかし 「ガキィッ!」 金属音が鳴り響く ―剣じゃ効かないのか?くそっ、他にいい手は・・・ 袋の中を探る。だが、その隙を魔物は見逃すはずもなく、足元に回りこまれた リンク「ぐわああああああっ!!!」 叫び声をあげるリンク ―くそっ・・・どうすればいいんだ・・・ 力が抜け、その場にひざますく 手に持っていた袋は、中身がそこらじゅうにばらまかれていた リンク「なにか・・・なにかないのか」 ふとリンクにあるものが飛び込んできた。少し前にカメイワで手にいれたある武器を・・・ リンクはその武器・・・マジックロッドを掴んで、魔物に向けた ―剣が効かないなら、物理攻撃は効かない。爆弾も、矢も、フックショットも・・・魔法の粉はもう残りがない・・・でも、これなら リンクはマジックショットを魔物に向ける。そしてその力を開放した 「ギャアアアアアアアア!!!」 叫び声をあげて、魔物は弾け飛んだ それにより、一気に静寂が走る 聞こえるのは自分の荒い息遣いだけ リンク「や・・・ったのか・・・」 魔物が再び現れる気配はない 予想が確信へ変わり始めたその時、異変は起きた リンクがふと床に視線を落としたときであった 自分の足元の影が妙に濃い・・・ ―・・・まさか! そう思ったやいなや、リンクはすぐさまその場から離れる それと同時に黒い影が大きくなり、形を形成し始めた それは、堅い甲羅に覆われていた 一つ目の目玉がこちらをむき、鉄棒がさらに太くなったような棒が二本、回転しながら回っている。魔物の腕にあたるのだろうか 魔物は腕を回転させると、リンクに向かって攻撃を仕掛けた リンク「ちっ!」 リンクはロック鳥の羽をもつと、ヒラリと宙を舞った 攻撃を避けているうちに、リンクはあることに気づいた ―コイツ・・・対空攻撃は出来ないのか ある程度攻撃を見ていればわかるが、魔物にはパターンがあった ただ腕を回し続ける・・・幾分タイミングを変えて攻撃してくるが ―これならイケる! リンクは腕が丁度体の下を通り抜けるとともに、床に降りたった リンク「はぁぁ!回転斬り!!」 そして、剣が魔物に当たった瞬間だった・・・ 「パキィン!!」 鋭い音とともに刀身が折れた リンク「え・・・」 と、次の瞬間には吹き飛ばされていた 「ズガアン!!!」 壁に叩きつけられ、リンクはその場に倒れこんだ ―剣が・・・折れた? よろよろとしながら立ち上がるリンク リンク「そん・・・な・・・馬鹿な・・・」 呆然とした表情のリンク。だが、すぐさま魔物の攻撃がきた リンク「くそっ!」 ジャンプして身をかわすリンク ―剣が折れたことをいつまでも悩んでちゃいけない。今は目の前の敵を倒すことにするんだ! 自分の心にそう言い聞かせ、何か道具はないかと袋の中に手をいれる リンク「!!これなら!!!」 リンクは素早く弓矢を取り出した。そして、狙いをしぼって矢を射った 矢は魔物の目に刺さる。今度はちゃんと効いているようだ ―回転斬りの威力を過信しすぎてたか・・・もうちょっと頭を利かせとけばよかったぜ そんなことを思いながらも、ただひたすらに矢を射っていく だが、残りの矢の本数は少ない。激しい戦闘の中で、ほとんどの矢が折れてしまったのだ ―後五発・・・四発・・・三発・・・ ダメージは確実に与えているものの、矢の残り本数が少なくなるにつれて不安と焦りが見え始めてくる 果たして、残りの矢で倒すことが出来るのだろうか? ―今は・・・信じるしかない 最後の一本の矢を手に取る リンク「くらえぇっ!!!」 ありったけの力を振り絞って矢を引き、射った 「グサッ!」 鈍い音がする。手には確かな感触があった。精一杯力を振り絞った・・・ だが、魔物はまだ倒れなかった。最後の希望を踏みにじるかのように・・・ リンク「ちくしょう・・・」 その場にうなだれるリンク。そこに、魔物の狙いすましたかのような一撃が入った 吹き飛ばされ、またもや壁に叩きつけられる ―やべ・・・意識が・・・ 意識が朦朧としつつあるなか・・・彼は死を覚悟した ―いいんだよ・・・どうせ・・・俺が勝ったら、この島は消えて無くなっちゃうんだ・・・  目覚めの使者さえいなくなれば、この島は消えない・・・そうだろう それは、島の秘密を知ってから、彼がもっとも苦悩していたことだった だが、彼はもう一つの言葉を思い出す 『魔物の力は現実じゃ・・・いずれ島中を支配し、邪魔なモノを消すじゃろう・・・』 この言葉の成す意味は、考えるまでもなかった・・・ 邪魔なモノ・・・つまり、人間達の事だろう ―結局・・・俺が勝っても負けても・・・マリン達は消えてしまうって事なのかな・・・ その通りであった・・・結局のところ、目覚めの使者・・・リンクがこの島に来た事によって、魔物達は人間達を襲い始めた 今ここでリンクが死んでしまっても、魔物達についた火は、もう消えることはないであろう ―もういいよ・・・疲れたんだ・・・ ふと、歌が聞こえてきた 心安らぐメロディー・・・疲れを癒してくれるような・・・ そして、聞きなれた歌であった 「ナンダ?コレハ!?」 魔物がそう叫んでいる 頭の中にイメージが滑りこんでくる そこに映し出されたのは・・・・ 月の光の下 波がよせる海岸で歌う 一人の少女の姿・・・ マリンだった ―俺は・・・マリンと約束したんだ・・・もう一度・・・マリンと会うんだって・・・ フラフラしながらも、リンクは立ち上がる。彼の目は・・・まだ死んではいない ―マリン・・・俺に力を・・・貸してくれ その時、彼の体の一部が光始めた リンクは光の出所をみる。そしてそこから、あるものを取り出した それは、この戦いに来る前にマリンから貰った、虹色の貝殻だった 貝殻は眩しいくらいの光りを放っていた そしてそれはリンクの手を離れ、宙に浮いた それは二つに割れたかと思うと、片方は同じ大きさのままの元の貝殻になった もう片方の貝殻は、輝きながらゆっくりと形を変えていき・・・一本の剣となった その剣は先ほどまでリンクが使っていた剣より刀身が一回り大きく、長かった リンクはゆっくりとその剣を握る。驚くことに、その形とは異なり、今までもったどんな剣よりも軽かった ―剣の柄に何か書いてある・・・『KOHORINTO』か・・・ リンクは剣を振った。すると剣先から光線が発射され、魔物に命中した リンク「効いてる・・・これならイケる!」 リンクは剣を握り締め、全身の闘気を剣に集中させたた ―ありがとうマリン・・・ 未だ微かに聞こえる、風の魚の歌 リンクは魔物に向かって走り出す。そして、魔物の目に思い切り剣を突き刺した 「グギャアアアアアアアアア!!!!!」 辺りに断末魔が響き渡る ・・・それとともに魔物の声が聞こえてきた・・・
『消えてしまう・・・壊れてしまう  我らの島が・・・我らの世界が  ・・わ・れ・ら・の・し・ま・・・  ・・・・わ・・・れ・・・ら・・・』
そう言い残すと、魔物は消え去ってしまった・・・跡形もなく 目に突き刺さっていた剣は、音を立てて床へ落ちた リンクは剣を拾い上げる。それとともに、目の前に階段が出現した そして、先ほどの魔物の声とは違う・・・澄んだ声が聞こえてきた
『・・・・・・リンクよ よくぞ悪夢に打ち勝った! 上がってきなさい。』
リンク「風の魚・・・か」 誰にも聞こえないくらいの声で呟く そして、階段を上がっていった そこは、卵の中とは思えないような場所だった ・・・いや、既に卵の中ではないのかもしれない。異次元の空間のような感触もする リンクを中心とした360度の空間に、星の瞬きのような光りが輝いていた 階段を上りきる。そこには、あのフクロウがいた フクロウ「ぼうや・・・いや、リンク殿。よくぞ悪夢に打ち勝った      その知恵、力、勇気は、真、勇者の証ぢゃ!」 フクロウはそう言った後、少しの間沈黙した。そして、再び語り始めた フクロウ「わしは『風の魚』の心の一つなのぢゃ      『風の魚』が眠る間、夢の世界を守る事が、わしの役目ぢゃった      ・・・ぢゃが、あるとき、夢の裂け目から悪夢が芽生え、島を蝕みだしたのぢゃ      ・・・そこへ目覚めの使者・・・つまりリンク殿が来られた      わしは信じておった。おぬしは悪夢に負けることのない、強い、勇気の持ち主ぢゃとな      ・・・ありがとう、リンク殿・・・これでわしの役目は終わった      『風の魚』に帰るとしよう。・・・さらばぢゃ!」 そう言い残して、フクロウは目の前から消え去っていった そして、その代わりに巨大な生物が現れた 白く、羽が生えており、巨大な図体。リンクはそれによく似た生物を見た事があった ―クジラだ・・・いや、それとは少し違う・・・だけど、よく似てる・・・ そして、そのクジラ・・・『風の魚』は、ゆっくりと語り始めた 風の魚「・・・・・・私は、風の魚・・・・・・眠りについて、一体どれくらい時が経ったのか・・・     ・・・始め私は・・・卵の夢をみていた・・・     やがて、卵の周りに島ができ、人や、動物が生まれ・・・世界が生まれた」 一時の空白。それをおき、再び語り始める 風の魚「だが、夢は覚めるもの。それが、自然の定めなのだ     私が目覚めると、コホリント島は消えるだろう・・・」 消える・・・その言葉に、リンクは全身を震わせて反応してしまった 無論、その事は今まで充分わかっていたはずだった・・・しかし、いざ目の前に迫ってしまった今、動揺を隠し切れないでいた 風の魚「・・・しかし、この島の思い出は、現実として・・・心に残る     そして・・・君はいつかこの島を思い出すだろう     この思い出こそ、本当の夢の世界ではないだろうか」 ―そうか・・・そうかもしれない。確かに、これは夢の世界だ・・・でも俺は、すべての事を、この目で、この耳で、この肌で感じたんだ・・・  これだけは、事実なんだよな・・・ 不意に、マリンの事が思い出された 目覚めたとき、自分の事を心配そうに見てくれていたマリン 風の魚の歌を楽しげな顔で歌っていたマリン 浜辺で夢を語り合ったときのマリン ・・・ゲームセンターでの出来事や、どうぶつ村。タマランチ山でマリンを助けたときなどの光景が、鮮やかに浮かんできては、消えた そして、分かれる直前のマリン・・・ リンクは顔を俯かせていた。そして、その頬には光り輝くものが流れ落ちていた 風の魚「・・・ありがとうリンク・・・時は満ちた!ともに目覚めよう!!」 風の魚がそう言い終わるとともに、姿は消え、声だけが聞こえてきた 風の魚「さあ!奏でるのだ!目覚めの歌を!」 ―そう・・・だな・・・これは、自分で決めた事なんだ・・・だったら、最後まで責任持たなきゃな・・・ リンクは8つの聖なるセイレーンの楽器を一つずつ宙へとかかげた・・・楽器は、重力に逆らうように宙に浮き始める そして、目覚めの歌を奏で始めた・・・全てを始まりへと返すため・・・ リンクには島の隅々が見えるようだった・・・否、見えるという表現ではおかしいかもしれない・・・そう、感じていたのだ まるで自分の体の一部のように思えた。島の事が隅々まで見通せる・・・ もちろん彼には感じられた。少しずつ島が消えて行く様子を・・・ ワンワン達が消えて行った・・・ 島の子供達が消えて行った・・・ タリンが消えて行った・・・ マリンが・・・消えて行った・・・ そして、島が・・・少しずつ消えて行った・・・ リンク「さよなら・・・マリン」 少年はそう呟く。1人の愛した少女を思って そして、地響きが聞こえてきた。まるでクジラが潮を吹くかのような水が、足元から迫り、リンクを押し上げ彼方へと飛ばしていった ―風の魚が潮でも吹いたのかな・・・ そんなことを思いながら、リンクの意識は消えた ―冷たい・・・ ふと腹から下が水に浸かっているような感触に見舞われたリンクは、目を開けた そこは、360度どこまでも水平線が続く、大海原の中であった 彼は今、1メートルほどの丸太に上半身を乗せ、下半身は水の中にある状態であった ―・・・そうか、船に雷が落ちて・・・気を失ってたのか リンクはそんなことを思いながら、丸太の上に上がり、その場所へと座った リンク「全身びしょ濡れだな・・・」 体を包む不快感に対し、つい愚痴がこぼれてしまう ―まぁ・・・一度は死を覚悟したんだ・・・生きてるだけありがたいと思わなきゃな 空は雲一つない快晴であった。この分なら服はすぐに乾きそうだ リンク「!!!」 が、突如彼の頭の中に先ほどまでの光景・・・コホリント島での出来事が蘇ってきた 慌てて周りを見渡す。しかし、そこに島があるはずもなかった ガクリと肩を落とし、ため息をつく リンク「やっぱり・・・アレは夢だったのかな・・・」 不意に、風の魚の言葉を思い出した。島の思い出は、現実として心に残る・・・と リンク「でも・・・やっぱり、ただの夢としか思えないよ・・・」 そうなのだ。どんなに夢の中が現実のようだとしても、夢が覚めればそれはたちまちただの夢にへと変わってしまう しかし、それは普段見る夢のように、意識がはっきりしてくると忘れてしまう夢ではなかった むしろ、本当に自分が経験したような感触であった リンク「・・・マリン・・・」 呟いた名前は、夢の中でリンクが好きになった少女だった 今でも、彼女の事は鮮明に覚えている。おそらく、この気持ちはゼルダ姫以上のものであろう 『ここが夢の世界だとしても、いつかまた必ず・・・会おうね』 そんな彼女との約束が思い出される。そして、別れ際に受け取った、虹色の貝殻も リンクは感触を思い出すように、ポケットの中へ手を入れた リンク「!!!これは!?」 ポケットの中に、小さい固体の感触がした。驚き、リンクはそれを取り出した それは、マリンから貰った虹色の貝殻であった リンク「嘘・・・なんで」 信じられない光景だった。夢の中で貰った貝殻が、現実に手の中にある。リンクはハッと思いつき、背中にかけてあった鞘から剣を抜いた リンク「やっぱり・・・」 彼が目にしたのは、目覚める前まで持っていた剣ではなかった。手にしていた剣より一回り刀身が大きく、また、とても軽かった そして、柄には『KOHORINTO』の文字が彫ってあった リンク「アレは・・・夢じゃなかったんだ・・・現実で起きた出来事だったんだ」 だが、ここで一つの疑問がわいた コホリント島は、風の魚の目覚めとともに消え去ったはずであった。だから、島の中で手に入れた物が何故あるのかが検討がつかなかった しかし、そんな疑問を一発で吹き飛ばすような、出来事に、彼は出会った リンク「アレは・・・」 リンクは海の上に浮いている何かを見つけた。それは・・・一輪の花だった そして彼はその花を見た事があった。ハイビスカスという種類の花だ コホリント島で、動物村のヤギにあげたことがあった。しかし、それとは違う・・・そう、マリンがいつも頭につけていた花に、よく似ていた リンクは丸太に乗ったまま、手で水を漕ぎ、その場所へとたどり着いた。そして、ハイビスカスを拾い上げた そして、彼は見た。10メートルほど先の水面に浮かんでいる少女を リンク「マリン!!!」 リンクは再び海の中に入り、泳ぎ始める リンクはマリンの所まで行くと、肩を掴み、大きく体を揺らし始めた リンク「マリン!マリン!!」 必死に少女の名を呼んだ どこかで私を呼ぶ声が聞こえる これは誰の声?聞いた事のある・・・暖かくて、優しい声 でも、もう私は疲れたの・・・島が消えていくとき、感じたわ・・・自分の体が少しずつ無くなっていくのを それでも私は歌い続けた・・・大好きなあの人のために もう一度会おうって約束した・・・叶わぬ希望だとは知っていたけれど・・・それでも、何か心の支えが欲しかった 黙って消えていくのが・・・嫌だったから ・・・! でも、それももう終わり・・・やがて私の意識もなくなっていく・・・ ・・ン! でも・・・やっぱり・・・もう一度会いたかった・・・ ・リン! まだ聞こえる・・・声。これは・・・ マリン! ・・・リンク? マリン「ん・・・」 マリンはふと、目を開けた 視線の先には、こちらを心配そうに見ている少年の姿が見えた それとともに、少しずつ意識がはっきりしてくる。彼女は目の前の光景に目を見開いた リンク「マリン・・・マリンだよね」 マリン「リン・・・ク・・・?嘘、なんで・・・」 マリンがそう言い終わらないうちに、彼女は身動きが取れなくなっていた。リンクに抱きしめられたからだ マリン「あ・・・」 リンク「よかった・・・マリン・・・君に、もう一度会えて・・・」 マリン「リンク・・・」 心が落ち着くような、それでいて暖かい温もりを、二人は感じていた どちらからと言うわけでもなく、二人はゆっくりと動き出す。そして、唇を重ねた。お互いを充分に確かめあうように ゆっくりとお互いの顔が離れて行く・・・ マリン「ねぇリンク、最初の約束・・・覚えてる?」 頬を紅く染めながら、しかし、しっかりとリンクの目を見ながら話すマリン リンク「もちろんだよ・・・二人でハイラルに行こう」 マリン「うん・・・」 マリンは再び、リンクの胸に顔をうずめる マリン「リンク・・・もう・・・これから先ずっと、私を・・・おいていかないでね」 リンクは少し驚いた表情を見せるが、すぐに穏やかな表情に戻り、喋った リンク「もちろんだよ・・・約束する」 マリン「うん・・・」 少しだけ涙声になる。それから、また、二人の影が重なっていった・・・ 二人がそんな話をしているとき、上空に一匹の羽の生えたクジラ・・・風の魚が飛んでいた 彼の中で、あのフクロウが、主である風の魚と会話をしていた フクロウ「しかし、何故あの少女は、島が消えたというのに貴方の元へ還らなかったのですか?」 彼らと同じように不思議に思っていたフクロウが喋る 風の魚は穏やかな口調で理由を説明し始めた 風の魚「本来なら、あの少女も島が消えたとともに、私に還るはずであった・・・彼女が私から生まれたものであったら」 驚きの表情を浮かべるフクロウ フクロウ「・・・では、あの少女・・・マリンは本来コホンリト島の住人ではないということなのですか?」 風の魚はゆっくりと頷く 風の魚「そうじゃ・・・マリンはまだ幼い頃、あの少年、リンクのように、航海をしていたときに嵐にあったのじゃ     それが原因で彼女の両親は死んでしまったが、マリンは運良く、コホリント島へと流れ着き、タリンに拾われたのじゃ」 フクロウ「だからマリンが、貴方を目覚めさせることが出来る風の魚の歌を歌えたのですね?」 風の魚「さよう。風の魚の歌は私から生まれたもの達には歌えなかった。彼らは聞いて満足はするが、自らが歌おうとはしなかったのじゃ     風の魚の歌は、目覚めの使者にしか歌う事は出来ぬ     マリンもまた、目覚めの使者の一人で会ったのじゃ。もしかしたら、マリンにもわしを起こす事は出来たかもしれぬ     じゃが、わしを起こすにはセイレーンの楽器が必要じゃった     風の魚の歌は無論一番重要じゃが、楽器が全て揃わない限りはその真の力を引き出すことは出来ぬ     それに、マリンには敵と戦う力が無かった。だから彼女は目覚めの使者になる事は出来なかったのじゃ」 フクロウ「そうだったのですね・・・」 風の魚は会話を一旦止め、今でははるか眼下にいる二人に目をやった 二人は楽しそうに会話している・・・満面の笑みを浮かべながら 風の魚「さて・・・長居は無用じゃ・・・そろそろ私達も立ち去ろうかの」 風の魚はそういって、どこへともなく飛んでいく・・・行く先は誰も知らない 地図にものらぬ、南国の孤島「コホリント」 この小さな島で、かつて大きな冒険があった 島を染めゆく、邪悪な魔物達の影 しかし、それも守り神「風の魚」の復活により、伝説へと幕を閉じるのであった・・・
〜Fin〜
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